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禁酒法と灯火管制のせいで飲み屋と映画館今日までの場所多し。駆け込みで国立映画アーカイブ宮崎駿魔女の宅急便』なんと今更はじめて観た。どうも後で聞いたら違うらしいが舞台はロンドンっぽさあったし、いい部分(人情)も悪い部分(ウーバー感)もかなりケン・ローチみがあった。案の定特集は今日までに。『火祭り』観直すはずだったのに・・・。

アテネに流れて駆け込みで瀬々敬久初期作三本。「ギャングよ〜」の菜の花畑、『獣欲魔乱行』の土管、テトラポット、廃墟のホテル、キャンピングカー、『牝臭』のドア縦開きの車。とにかくロケ地とガジェットに唸らされる場面だらけ。特に『獣欲魔乱行』は大傑作。3本とも現在の気分にぴったりハマる閉塞感に満ちていた。

夜、旬素材ウーウェン自炊。蕪とクレソンの和え物がなかなかうまかった。ワサビにこだわればもうちょいよくなるのか。筍と春キャベツのスープはほぼ味噌汁だった。新玉ねぎ丸ごと煮、二回目は梅干し昆布ダシでやってみた。うまかったが梅がやや甘めだったか。

 

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三度目の緊急事態宣言。昨夜からどこの美術館や映画館が閉まるのか一通り調べる。「香典のつもりか」のユーロはじめミニシアターの一部は呆れ返るとともに腹くくって営業続ける模様。浅草や末廣亭など寄席は休業妖精の「社会生活の維持に必要なものを除く」という文言への解釈(寄席は必要)を明示することで堂々営業宣言をしていた。一休さんみたいで良い。とりあえず自分はもともと行く予定だった映画や寄席に粛々と通うことしかできない。大学の授業については都内は全てリモートに。予想はしていたが埼玉は完全無視の模様。県外の移動をスルーしてどうするんだという気はするがもはや突っ込む気力なし。

ジジェクの日本オリジナル編集版『ロベスピエール/毛沢東』からバートルビー章。要は決して心からは信じていないけどあえて従っている式のシニシズムとも無縁ではない、カフェイン抜きコーヒーならぬ「暴力抜きの革命」に対して、しないことを「好む」バートルビーの不気味な姿勢を対置、ということなのか。抵抗や反抗の鋳型にはめるのではなく、彼固有の不気味さと向き合うこと。『パララックス・ビュー』末尾の適当すぎるノーマン・ベイツとのアナロジーの狙いもおそらくこの辺にあるということだろう。

辺見庸の『たんば色の覚書』も一応流し読み。自身も病魔と戦う中で、死刑囚にバートルビーを薦めようとしていた。

夜は信じがたい忙しさだった四月の締めの一つとして論文提出。すでに内容はできていたものを規格に合わせただけだが、そんな作業をする体力と気力がまだ残っているだけ偉い。さらに月曜のオンデマンド授業の資料を2コマ分アップしてようやく寝た。偉すぎる。

 

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日曜に働きすぎたせいで事務メールいくつか処理した後夕方まで使いものにならず。最近月曜日は大体作業うまく進まないがまあしょうがない。これ以上頑張っても寿命が縮むだけなので徹底的にだらける。

今年のオスカーは昨年に続くアジア系に加え、年寄りの活躍が目立つ結果に。『ミナリ』のユン・ヨジョンの笑えるけど毒もある発言はどれも映画からそのまま出てきたかのようだった。主演男優賞の結果でまた色々もめそうだが、まあボーズマンのもアンソニー・ホプキンスのも観てないので適当なことは言えない。とはいえ、個人的には亡くなったから賞あげるみたいなのも死んだインディアンはいいインディアン的な違和感あるし、別に良かったのではと。とりあえずホプキンスの受賞作は観たい。詳しい出自全然知らなかったが、クロエ・ジャオが超金持ちの生まれでああいう映画を撮り、それがアカデミーで受賞した事実は中国国内ではなかったことにされる、という全体図は下手したら作品そのものより興味深かった。まあそもそも公開延期になってるもの多すぎ、一部リモートとかもあってとにかく小粒で地味な印象。

夜小倉さんのバートルビー+コンフィデンス・マン論を。バートルビーにおける法律家とバートルビーの関係を失敗した友情関係になぞらえ、そこにさらにメルヴィルと読者の関係を重ねていく構成は面白かった。関係が実際にうまくいくことはなく、いずれうまくいくと信じることもメルヴィルにはできなかったが、偶然関係が好転する可能性を完全に捨てたわけでもなかった(読者を得る可能性を完全に切り捨てていたわけではなかった)という結論はやや微温的では、とも思ったが、模範的な査読論文としてはこのぐらいの手堅さが求められるバランス、という気はする。

 

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今日から1コマ対面もリモートになり自室で3コマ。これはこれで別種の疲れが。昼に振り込みで郵便局行った以外外出もせず。わずかな時間で二度も救急車見て怖かった。インド株で色々やばいことになっているのだろうか。

ケリー・ライカート関連の演習はとりあえず『オールド・ジョイ』の映画版と原作の比較まで終了。原作への細かいアレンジがどれも絶妙に効いていることが判明。

 

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 昼2コマから帰って必死で準備の仕上げ。夜バートルビー連続講義最終回。まあ最低限の役割は果たせたか。自分は仕事あったのだが翌日祝日だしと軽い気持ちで打ち上げWeb飲みに突入したら結局2時まで。

 

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二日酔いの中祝日にもかかわらず2コマ。腹いせに移動中の時間でラファルグ『怠ける権利』、帰りにシネマヴェーラでB級ノワール2本。アンソニー・マン『脱獄の掟Raw Deal』、ジョセフ・H・ルイス『ベラ・ルゴシの幽霊の館Invisible Ghost』。脚本・撮影最高の前者は旧作年間ベスト候補。最初から最後までちょっとずつこちらの予想を裏切り続ける展開面白すぎ。後者はゆるゆるの脚本に苦笑もベラ・ルゴシかわいかった。

 

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2コマ。バートルビー講義の積み残しや打ち上げで色々聞いた流れで本買ったり読んだり。『中動態の世界』の『ビリー・バッド』論をバーバラ・ジョンソンの論文とまとめて読み直し。大和田さんのユリイカ論文にしても國分さんの論考にしてもジョンソンの批判、歴史化の部分には納得。最近の学会誌とか読んでいて、特に19世紀文学とかだとさすがにネタ切れがひどく、キャノン化した研究の歴史化ぐらいしか挑発的な読みを提起する筋がなくなってきてるのか、とか漠然と考えていたが、2002年とかの段階ですでにその方向で書かれたものも全然あったことに今更気づいた。

『中動態の世界』ジョンソンともう一つ大々的に取り上げられていたアーレント『革命について』も読むか、と思ったが前作を途中でやめてたことが判明したのでまず『人間の条件』に戻ることに。