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土曜だというのに夕方までひたすら授業準備。前期の残りで使うTed演習のオンデマンド資料をまとめて作る。TED全体でもかなり有名なチママンダ・アディーチェの二本、それほどパンチラインがあるわけではないが分かりやすいアクチュアリティはあるので多少は響くと良いが。あとはヒルビリー・エレジー回なども新しく加えた。

夜はウーウェン自炊。牛肉の唐辛子炒め。醤油入れ忘れ、牛肉炒めすぎでややパサパサに。あと蕪とレタスのなんか。

そろそろ観ないとどうにもならんミニシアターエイドから『お嬢さん』。ブス/美人の対立で押す脚本がどうにも耐え難かったのと、全員ENBUなのかわからないが素人っぽさが残りすぎているように見えた各俳優の演技が自分には全くはまらなかった。美人は美人で抱えている闇をポリコレを気にしすぎず描く、といった路線なんだろうというのはわからなくはないのだが、監督が演技がうまくないと判断したであろうメンバーの雑な扱いなども含めて色々と必要な配慮が足りていないところがあるようにも。四宮氏の撮影はわりと好きな方だと思うのだが、本作での手ブレ、長回しの多用についてはあまり奏功しているとは感じなかった。

デヴィッド・バーンがルアカ・バップというレーベルから出していたらしい、アフリカのサイケ音楽ばかりを集めたコンピレーションの3枚目をたまたま飲みながら聴いたらかなり好みだったのでApple musicで探したところ、コンピ全5枚がちゃんと入っていてびっくり。1枚ずつ聴き込みたい。

 

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ラピュタ昼の回がまさかの売り切れだったので、南阿佐ヶ谷PRABHATでノンベジミールス、高いけどうまい。店主の思想がやや気掛かりではあったがまた行くと思う。

ラピュタで『暴る!』。序盤に出てくるセクハラ刑事二人を除きすべての男性登場人物がレイプ魔という信じがたい設定が見事に活きていてめちゃくちゃ面白かった。社会人レイプ魔を追ってきたマッドマックス三兄弟みたいな男たちのレイプ相手がそっちなのかとか、終盤の激突やヒッチャーのような怖すぎるカーチェイス、決めまくりのラストシーンからのエンドロールへの流れ、謎にかっこいい劇伴のジャズなどあらゆる要素が最高。シンチェリータでピスタチオとストラッチャテッラ。同行者の紅茶のやつが一番うまかった。駅近の古本屋が妙に安かったので色々買ってしまう。

夜、豆腐と蕪の梅煮、冷たい和え麺、みょうがと蕪の葉和え。『暴る!』が良すぎたので流れで同じく桂千穂脚本の『(秘)ハネムーン 暴行列車』をアマプラで。冒頭の強盗未遂と結婚式からの男×2+ドレス女の脱走という意味不明すぎる展開だけでお腹いっぱい。駄菓子屋での即席ストリップ、またもひどい目にあいまくる八城夏子、なぜか『暴る!』同様にピンクレディーがかかる中ナポリタンを食う女の描写など、見どころだらけ。ピンクレディーかける時は毎回歌詞と展開をリンクさせようとしてくる謎の悪ふざけにも笑ってしまう。二本とも尺含めてめちゃくちゃB級アメリカ映画なのも良かった。

 

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午前オンライン2コマ。オンデマンドなので今年度は予約投稿をなんとか使いこなそうとしているんだが毎週なんかしらの資料公開をミスっている気が。毎週当日に確認して焦る展開に。操作性が良くないのもあるが、さすがにそそっかしすぎ。

銀行と大学の生協、図書館に寄りたかったのだがオープン時間と天気の兼ね合いで自転車で行くには微妙な感じに。例によってアメッシュとにらめっこするも結局は断念。その分他の仕事を進めればよかったのだがうまくいかず。

『はこにわ虫』。予想以上に、びっくりするぐらいガロ。いましろたかし『未来人サイジョー』。正直言って『原発幻魔大戦』についてはずっと読むのがしんどくて、もう新刊買うのやめようかとも何度か思ったが、昭和へのタイムスリップというベタな大ネタを一つかませるだけでここまで完全復活するとはびっくり。政治をめぐる状況がひどすぎて怒る気力すら失せてしまったのかもしれないが、こちらとしては大歓迎。今回ぐらいのバランスのものであればずっと読み続けたい。そんなうまい話が、と思ったところですっと我に帰る展開もいい塩梅だし、半自伝的なところもうまく作用していたような。

Puar "Bodies with New Organs"(2015)、高度に理論的かつアクチュアルな状況への応答の要素もありなかなか面白い論文ではあったが、さすがに学部2年生に予備知識なしで読ませてよい代物ではなかった。

 

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オンラインで3コマ。昼食後磁気不良のカード交換のため銀行行った以外は外出せず。数分止めている間に嫌がらせをされたのか自転車の前輪がパンク。

ケリー・ライカートCertain Womenの傑作百合エピソードの原作前半。主人公のポリオなどの障害設定と兄への劣等感と対女性のぎこちなさの結びつきを指摘する声多し。この時点では彼に同情的かつベスのおざなりな接し方に批判的な意見が多かった。後半どうなるか楽しみ。

諸事情により障害学の論文を立てつづけに読んでいる演習は、さすがに論文が難しすぎて発表の学生さんたちに申し訳ない展開に。来週以降でどこまで修正できるか。

3コマやった日の夜はあまり使い物にならないことにも徐々に慣れてきた。湿度がやばいのもあり、頭働かず。数年会っていない友人の個展のオープニングトークの動画を見る。コロナじゃなければ展示行きたいところなのだが、どこも開いていない京都にこのタイミングで行くのもどうなんだという。さらばのyoutubeいくつか。このタイミングで競馬企画やるのもさすがだし結果も神がかっていた。あと『ニューヨークで考え中』一巻を。

 

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対面のため寝不足のなか早起きし遠出してきたのに2限が体育祭で休講というまさかの知らせを聞き脱力。オリンピック強行する国の大学だけあるが、正気を疑う。1コマやって帰る途中で上映情報を入手、慌ててアテネへ。ハリウッド黄金期唯一の女性監督だったらしいドロシー・アーズナー監督作二本。

『人生の高度計』(1933)。キャサリン・ヘップバーンの初主演作。女パイロットかつ蛾のコスプレもしちゃう彼女のかっこよさと可愛さが全開。ヘップバーン演じる主人公にどこまで女らしさを付加するか、というあたりで当時の偉い人たちとのせめぎ合いがあり、この辺の落とし所になったんだろうと想像しつつ観た。プレコード期だけあって不倫しまくりの現代的な展開もぐっとくるものが。

『恋に踊る』(1940)。男をめぐってステージで殴りあい、裁判までしといてカラッと仲直りする踊り子2人の河原で喧嘩する青年たちのような爽やかなシスターフッドに感涙。主人公がステージに窃視的な視線を向けエースであるバブルスちゃんのかませ犬である彼女に野次を飛ばしまくる客を睨み返し演説するところは、悪い意味でfemale gazeって感じで説明臭さも相まってそんなに最高、とは思わなかったが、その後普通にキャットファイトが始まり、しかも絶交しないのはめちゃくちゃ良かった。推しはキャラ的にも見た目的にもルシル・ポール=バブルス。最近のだと『ハスラーズ』のJローとかにも通ずる姉御ノリ。

移動中にトロント『ケアするのは誰か?』を。

 

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対面2コマ、オンライン1コマ。移動中に熊谷晋一郎『リハビリの夜』を。

 

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2コマ。アテネに移動してエンゲル=オーキン関連作三本。オリジナルの35mmカメラを用いたドキュメンタリータッチの作風がカサヴェテスやヌーヴェルヴァーグに影響を〜、という惹句に惹かれて。

『小さな逃亡者』。大傑作。兄とその友人に担がれ銃で遊んだ末に兄を殺してしまったと思い込んだ弟が、一人兄の大切にしていたハーモニカを持ってコニーアイランドへ。徹底して運動と「欲望の感染」に焦点を当てているのがすごい。その中でオリジナルカメラを使っていることもあってか、例えば偽銃撃場面のモンタージュ写真屋での上下反転をめぐる短い挿話、鏡に映った自分を見つめる場面などで、「映画とは、映像とは」というテーマもさりげなく差し挟まれる。兄たちが目の前でやっていてなかなか仲間に入れてくれなかった野球遊び、本来であれば弟を置いて彼らが行くはずだったコニーアイランド。当地に向かった弟は、射的とボウリングでボールを投げることに異様にのめり込んでいくが、これは冒頭で自分が参加できなかった遊びを再演することで、その意味で銃撃ごっこにもつながる。ごっこというとその後はまる乗馬もそう。冒頭で言及された弟自身の得意分野と重なりつつ、弟は指名した係員の指導のもと、西部劇の主人公を演じるようになっていく。繰り返し遊ぶために小銭が必要となるが、空き瓶を集めて小金を得る方法も、浜辺で会ったやや歳上の男の子の行為の模倣である。空き瓶回収→遊び→空き瓶回収の無限ループでも退屈させることのないよう、編集で省略するところと残すところのバランス感覚も見事。模倣の反復を通じた成長、みたいなテーマもうまく表現されていたような。

この何もかもが流動的に動きの中にある感覚は文字についても言えて、兄がチョークで遊園地内に書く弟へのメッセージは、次々に現れる別の客のいたずらによってその意味を変えていく。地面や壁にチョークで書き込んだ文字を消したり修正したりするというモチーフは明らかにエンゲル=オーキンにおいては重要なものとなっているようで、次作『恋人たちとキャンディ』でも娘がカバと母の恋人の名前が同じことをからかう書きこみを足で消そうとする場面が出てくる。

『恋人たちとキャンディ』。幼い娘を持つ未亡人とその彼氏、三人の関係性を描く。子供の演出を超えた動きや表情を機動性の高いカメラで追っていく構図は前作とも共通。前作の遊園地に代わって、今度は動物園やデパートでのゲリラ撮影でリアリティを持ち込もうとしていた。

『結婚式と赤ちゃん』、結婚に踏み切れない結婚式と赤ちゃんだけ扱う写真屋で何とか生活する貧乏移民カップルの物語。同時録音で祭りの様子を記録しているあたりがキモなのか。おそらくは設定もハリウッド的な夢物語へのカウンターとしてのリアルNY若者移民ライフを記録するという狙いが先にありそうな感じだった。男の方の煮え切らなさと表裏一体のマウント取りに行く感じがなかなか厳しかった。

休憩中に友達が言ってたが三本とも全部父親が不在、というのも確かにそうだなあと。何かしら当人たちの環境が反映されているのだろうか。

夕食後、資料を探している間にラジオ的に聞いていたシネフィル軍団のスペースにいつの間にか参加してだらだら喋っていたらあれよあれよという間に朝になっていた。

 

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やや寝不足のなか、昼から馬喰町へ。土曜しか開いていないというスーパーおしゃれ雑貨屋を冷やかした後、フクモリで魚食べて、ギャラリーaMで黑田菜月「写真が始まる」。3つ見てきた「約束の凝集」シリーズではここまでの個人的ベスト。

「友だちの写真」、2枚の写真をめぐるゲームという小さな仕掛けが絶妙な距離を生み、今度はその距離がそれを越えようと試みる新しい言葉を生む呼び水となる。なんとなくやっているようでかなり考え抜かれた仕掛けになっていることが見ているとだんだんわかってくる。キュレーター長谷川さんとのインタビューで出ていた「批評と制作」というアナロジーがまさにはまるな、と。写真の持つ暴力性や「危うい側面とか、結局写真は単なる写真でしかないってこととか、そう言ったことを一度受け入れて、それでも続けているのがよくわかる」という長谷川さんの評、および「「自分のほうがより厳しくて不毛な荒野にいるんだ」ということを競い合うのをやめよう、ということ」、という作品の映像に向けた言葉には膝打った。本作における「荒野からの帰還」の有り様からは、批評アレルギーとかファンコミュニティの自閉みたいなトピックへの処方箋の一つとしても考えられるようなポジティブさを受け取ることもできそう。言葉にできること、写真にできることを適切に突き放しつつも同時に信じること。

「部屋の写真」においても、撮影者である黑田さんと写真に撮られた部屋に住む被介護者を一切映さずに、あくまでもその部屋に通ったデイケア介護者の視点から写真を語り直す、という設定が見事に機能していた。写真と言葉の関係、映像における写真の位置、という点でユスターシュの『アリックスの写真』あたりを想起したが、撮影者が第三者に写真について語るユスターシュ作品と比べてもより間接的になっている点と、デイケアというこれまた微妙な距離を挟んで写真に映る空間と関わった人が語り手となっている点で、より写真と言葉のズレがクリティカルに前景化していたような。整音が黄永昌さんだったこともあり、どことなく濱口・酒井の東北記録映画三部作を思い出しもした。

行くはずの映画間に合わずも、天気良かったのでぶらぶら。ムーンドッグ感のあるアロハシャツをかなりの安値で購入。

夜自炊はフォー、ウーウェンから香味野菜の白和え、卵とトマトの炒め物。卵トマトはべちゃちゃになってしまったが味は問題なし。もうちょいトマトが崩れないように炒め時間に工夫が必要そう。

ミニシアターエイドから堀江貴大『いたくても いたくても』。映画よりプロレスが好きなのでは、と疑いたくなるほどに正しいプロレス要素に満ちた映画で好感持った。クドカンドラマの能に勝るとも劣らない通販会社×プロレスという無茶すぎる組み合わせを強引にまとめきるセンスは次作以降にも期待持てそう。映像面では特にハッとさせられるところはなかったので、案外映画というフォーマットにこだわりすぎないほうがいいのではという気もした。

 

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寝起き悪し。昼食を挟んで前後でCL決勝観た。チェルシーの完勝。カンテはもうバロンドールあげてもいいのではないか。シティは色々起用ミスっぽいところがあったのに加えて、頼みのデブライネが怪我したのが痛かった。

明日の2コマ準備。去年も学生さまに見てもらったロクサーヌ・ゲイの動画、今年も彼女が言うgood/badの解釈を間違えている人がめちゃくちゃ多かった。一回でもひねりが入っていると解読しにくいということなのか、そもそもちゃんと観てないのかどっちなんだろう。夕方以降、遊びの予定を断り酒を飲まないことに全精力を傾けてしまったためか終わらせるはずの事務仕事何もできず。さすがに寝る前自己嫌悪に陥る。

 

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午前オンデマンド2コマ。

Twitterで見かけたので、cinefilに公開時にアップされていたっぽい『まともじゃないのは君も一緒』チームの新作とスクリューボールコメディ史を絡めた鼎談を読む。まともじゃない字数だったが黄金期にとどまらず『ミニー&もスコヴィッツ』やファレリー兄弟、アパトーギャングなどにも迂回しつつ近年のアーロン・ソーキンの独自性を強調、他方日本では川島雄三をはじめ増村、森崎、濱口「永遠に君を愛す」まで言及されるめちゃくちゃ面白い内容。完全に自分の趣味ラインど真ん中であった。森崎×高橋洋×色川のドラマでデビューしたっぽい根岸洋之プロデューサーの貢献がどこにあったのかがよくわかった『婚前特急』の製作秘話も良かったし、何よりファレリー兄弟ベストは『ふたりにクギづけ』、で一同意気投合しているあたりに嬉しくなった。全然言及されていなかったから黒歴史認定なのかもしれないが、未見のハワイのやつも観ようと思う。

午後久々に大学へ。図書館でいくつか返却、取り置き分含めてまあ資料だから・・・と言い訳して大量に新刊購入。帰りに事務仕事進まんのは髪の毛がうざいから、という謎理論でこれまでにないぐらい髪を短くしてみたが結果ヤバ目の半グレみたいな髪型になってしまった。合計で自転車1時間半弱。